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クリーク・アンド・リバー社(C&R社)が運営するC&R Creative Academy(以下、アカデミー)責任者佐藤が、卒業生にインタビューして、本音で語ってもらうシリーズ。
今回インタビューをしたのは、ソレイユ株式会社で現役エフェクトデザイナーとして活躍されているVFX/ゲームエフェクトコース卒業生の山本さんです。
美術大学を卒業後、SNSのプロモーション業務を経てゲームエフェクトデザイナーになった山本さんに、業界をめざしたきっかけや、クリエイター人生にかける思いをお話しいただきました。
[インタビュアー]
C&R Creative Academy VFX/ゲームエフェクトコース担当エージェント:谷津郁花
[インタビュイー]
VFX/ゲームエフェクトコース卒業生:山本さん(2021年7月卒業)
目次
谷津(エフェクトコースエージェント)※以下、谷津:
本日はどうぞよろしくお願いいたします。 まずは、最初に簡単に自己紹介をお願いいたします。
山本さん(卒業生)※以下、山本:
大学は多摩美術大学でデザインを専攻していました。卒業後はアルバイトをしながらイラストレーターとして仕事を請け負っていましたが、その後就業した会社はクリエイティブとは関係なく、SNSを使ったプロモーション業務を行っていました。例えば、インスタやTwitterで広告を出したりですね!
谷津:
企業から頼まれてプロモーションやコンサルを担当するとか、そんな感じですか?
山本:
まさにそうです!
谷津:
クリエイティブな仕事だとは思いますが、エンタメ業界っていう感じではないかもしれないですね。
山本:
そこでの業務の中で進行管理やディレクションをすることもあったのですが、実際に自分の手を動かして何かをデザインするクリエイティブなことをするというのはほぼなかったんですよね。
谷津:
そこからクリエイティブ業界に入りたい、クリエイターになろうと思ったきっかけってなんですか?
山本:
前職で色々なデザイナーさんと一緒に仕事をしていくうちに、自分もクリエイティブな仕事をやりたいなと、転職を考え始めました。
クリエイティブ業界といってもいくつかあるじゃないですか、ゲーム業界はもちろん、映像業界などもある中で、ゲームを選んだのはやっぱり子供のころから“ゲームが好き”だった、というのが大きかったですね。
谷津:
ゲームは幼いころからずっと遊んでいたんですか?
山本:
そうです!幼稚園の頃には家にファミコンがあって、ずっと遊んでいました!
谷津:
この業界もアカデミーを受講される方も、本当にゲームが好きな方が多いのですが、好きなことを仕事にするのって大変、という話をよく聞きます。
特に山本さんは身近でクリエイティブ職の人を見ていれば、大変な状況を身近で見ていたと思いますが、そこのところいかがですか?
山本:
そうですね。やっぱり作る仕事って、色々とどうやって表現しようとか悩んだりすることがあると思うんですけど、ただ、悩んだ結果いいものができた時はすごい達成感があるというか、喜びというか、やりがいがあるなって感じました。
それを思うとやっぱり作る方が絶対楽しいだろうな、やりがいがあるほうがいいなと思いました。
谷津:
やりがい!大事ですよね。 エンドロールに載るって結構大きいと思っているんです。個人的に。
私はエージェントなので、私自身がクリエイティブなことをしているということではないんですが、
スタジオ(VFX STUDIO)の方が関わった作品に名前が載っているとそれだけで感動します。
作品に携わり、その作品が世に出ていくっていうのはやっぱりクリエイターならではの達成感なんだなと思いました。
谷津:
そんな山本さんがクリエイターを目指そうとなったときに、一応クリエイティブ業界にはいらっしゃいましたが、ゲーム業界は未経験みたいなところがあったと思います。ご自身で就職活動をされたときっていかがでしたか?大変でしたか?
山本:
そうですね。まったく経験がなかったので、とりあえず未経験でも入れるゲーム会社があるか検索してみたんですが、やっぱりなかなか求人がなくて、
本当にどうしようと思っていました。ひたすらGoogle検索で何ページも見ていってどこかにあるかなって探したんですけど、やっぱりなかったですね。
谷津:
美大出ている方だと、美大を出てるというだけで基礎もわかっていて何でもできるんじゃないかって勝手に思っちゃうんですけど、求人は全然ないですよね。
山本:
実務経験は最低1年以上で、実務経験3年以上と書いている会社も多く、やっぱり未経験のハードルはすごく高いなって思いました。
谷津:
そんな中でどうやってアカデミーを知ったんですか?
山本:
たしか、『ゲーム業界 転職』とかでGoogle検索したときに出てきたと思いますね。
谷津:
そうだったのですね。 ちなみにアカデミーは以前までオフラインで学習場所を用意していて、コロナ禍もあって今のオンラインの形になったのですが、山本さんが受講されたときはオンライン体制でしたか?
山本:
私の時はオンラインと通学半々ですね。私は通学で受講していました。
谷津:
ちょうど移行期ですね。 ちなみに応募しようと決めたときに、完全無料ということもあって若干怪しいというか、本当かな?みたいなところがあったと思うんですけど、二の足を踏む要因にはならなかったですか?
山本:
なりましたね(苦笑) ただ実は、数年前に1度アカデミーの説明会だけ受けたことがあったんですよ。
谷津:
え、そうだったんですか!
山本:
ただ、その時は漠然とゲーム業界いいなぐらいの気持ちで受けたので、なかなか踏ん切りがつかなくって、結局応募するまでは至りませんでした。
そこから前職を続けながら今後のことについて考えたときに、30代で異業界異職種へ転職するということにすごく不安があり
1年ぐらい悩んでいましたが、考えたところで時間が過ぎるだけなので、だったらもう飛び込んでみようと思ってアカデミーに入りました。
谷津:
いいですね。確かにそうなんですよね。考えている時間って立ち止まっている時間になっちゃいますから。
山本:
年齢的にも考えて早いに越したことはないだろうと思って、それで決めました。
谷津:
ちなみに1回目の説明会を受けたのはいつ頃ですか?
山本:
前職で働いているときに考え始めていたころなので確か2019年ぐらいですね。
谷津:
2回目の説明会を受けて思い切ったというか、飛び込んだところがあったと思うんですけど、その時の心境はどんな感じでした?
一度説明会も聞いているし挑戦しよう!という感じだったんですか?
山本:
そうですね、2回目の説明会を受けたときは、説明会の内容で左右されることなく、応募しようという気持ちで挑んでいます。
谷津:
なるほど!ありがとうございます。ちなみに、最初は怪しいかもと思われていた受講料完全無料なところは応募するきっかけになりましたか?
山本:
なりました。(笑)やっぱり専門学校へ通うとなると結構なお金もかかりますし、自分で勉強するとなると機材やソフトを用意しなければいけません。
そう考えると、転職のハードル高いなと思っていたんですが、アカデミーなら受講料無料だし、通学するとPCも貸してもらえるというのはすごくありがたかったですね。
※現在は完全オンラインになっており、作業環境の提供やPCの貸し出しは行っておりません。
谷津:
今は完全オンラインになっていて、Webカメラや液タブなどの機材は皆さんにご用意いただいてMayaのライセンスはこちらで用意しています。
正直機材の面がネックになっている方もいらっしゃるとは思うのですが、当時はそこが通学の良さでもあったのかなと。
今はオンラインになったことで日本全国、遠方の方も気軽に受講できるようになったことで興味を持ってくれる方もいらっしゃるのかなと思っています。
谷津:
山本さんは通学で受講されていたと思いますが、当時の雰囲気を覚えていますか?
ちなみに私が入社した時には完全オンラインに切り替わっていたのですが、当時の話を聞くと本当に学校みたいな雰囲気だったと伺っています。
山本:
そうですね。作業中はみんな黙々と作業しているんですけど、お昼は一緒にランチに行ったりしていましたね!
あとみんなゲーム業界を目指しているのでゲームの話をしていても普通に通じるというか、そこも感動しました。
谷津:
いいですね。一緒にランチに行けるのは通学ならではですね。
ゲームが好きというか、同じ方向を見ている人が周りにいるというのは、自分のモチベーションを保つきっかけにもなりますしね。
ちなみに、アカデミーのエフェクトコースの受講期間は5か月なんですが、どんな感じでしたか?
山本:
私が入ったのが2020年の12月の半ばで、ポートフォリオができたのが2021年の7月上旬だったので、少し長めに…。(苦笑)
谷津:
それは、講師や運営と相談して受講期間を延ばした感じですか?
山本:
そうですね。ユニークエフェクトの制作をもう少し頑張ろうと思って。 あれもこれもと詰め込んでいたらあっという間に時間が流れていってしまいました…。
谷津:
5か月間って結構タイトなスケジュールだと思うので、忙しい中駆け抜けなければいけなかったのではないかと思うのですが、実際どれぐらいの時間を制作に充てていたんですか?
山本:
ほぼほぼ毎日、受講期間はずっとですね。アカデミーだと10時~17時の受講時間が決められていたんですが、家に帰ってからもテクスチャを描いたりもしていました。Photoshopだったり、Fresco※を使って、手描きのテクスチャを描いていました。
iPadで動かせるので、家で作業できることはやる。みたいな。
※Adobe Frescoのこと。AIを搭載したブラシ機能を使って水彩画や油絵のような表現ができるイラストアプリ。
谷津:
すごい!でもそうですね。そういう方の方が短期間で急成長されているのですごく尊敬します。
私も色々な生徒さんに「もう少し制作頑張りましょうね」「お時間どのぐらいやっていますか」と聞くんですけど、結構タイトというか制作メインの生活になるじゃないですか…。心が折れそうになったりとかはありました?
山本:
いや、ないですね。もともと美大に入るときに、みなさん大体受験のための予備校に通うんですよね。
そこで朝から夜の10時とか11時までやっていたことがあるので、それを経験すると余裕とまでは言わないですが、大丈夫でしたね。
確かにテクスチャがうまく描けなくてつらいとかはあったんですけど、それを含めて制作に熱中している時間が朝から晩まで使えるっていうのは本当に楽しかったです。
谷津:
いいですね。
山本:
今は働いていて、お仕事として制作に向き合っていますが、アカデミー時代は自分の制作だけを考えられるっていうのは本当に楽しかったと感じています。
谷津:
アカデミーの受講期間を終えたら就職活動になるじゃないですか。就職活動で苦労されたこととかありましたか?
山本:
アカデミーって業界にまずは入ることを目標にしているので、派遣になる場合が多いと思うんですけど、どうしても契約社員以上が良かったので、
それで話を進めてもらっていました。この年齢で未経験となると契約社員ではなかなか書類も通らなくて苦労しました。
谷津:
じゃあ最初に雇用形態やこだわりの部分はしっかりと伝えられたんですね。ちなみに山本さんの支援をしたエージェントとはどんなやり取りをされていましたか?
山本:
基本電話でのやり取りでした。 私の希望が特殊だと思うので、担当のエージェントさんも苦労されたと思うんですけど、電話で色々と希望を聞いていただいたり、実際に社員として就業が決まった方のノウハウを教えていただいて、どうやったら社員として受かるかアドバイスをいただくなど、ご協力いただきました。
谷津:
書類の準備とかも大変だったんじゃないですか。
山本:
はい。ポートフォリオ(デモリール)や履歴書、職務経歴書など基本的な書類の用意はもちろん、それとは別に私から申し出て作品の解説資料を出しました。
ユニークスキルのコンセプトアートや工夫した点を資料にして、資料に関してもフィードバックをいただいています。
谷津:
すごいですね。確かに業界の方から見ても動画を見るだけではなくて、資料を見た方がどんなところが得意なのか、知りたいところですよね。
山本:
どうしても書類と作品映像だけだと伝わりきらないかなと不安だったので、使える手は全部使っていきました。
谷津:
実際に業界に入って、アカデミーでやってきたことと実際の業務とちょっと違うというところもあったと思うんですが、困ったことや苦労したこと、逆に楽しかったこととかありますか?
山本:
やっぱり、アカデミー時代はエフェクトのことだけを考えて作っていたんですけど、業務となると、例えば当たり判定の大きさを考えないといけないし、
エフェクトがキャラと被って見えなくなるということもありまして…。
実際のゲームになる、となると色々と考えないといけないことがあるので、やっぱりその違いはありますね。
谷津:
そうですね。それこそデータの大きさとかも限られてきますしね。
山本:
それこそアカデミー時代は特に気にせず行っていた処理も、業務でやったら絶対にアウトということもあるので、処理負荷は必ずチェックしています。そこは本当に大きな違いですね。
谷津:
ちなみにエフェクトデザイナーをめざしてアカデミーに入って、実際にエフェクトデザイナーになったときのギャップや驚いたことはありましたか?
山本:
当社が開発会社っていうのもあるんですけど、結構企画の方だったり、プログラマーさんと密にすり合わせないといけないというところはびっくりしましたね。
入る前だとアセットだけ作っていればいいのかなって思っていたんですが、何をどこにどうやって実装するのかとか、さっきの当たり判定のこともありますけど、各セクションと連携してやるっていうのがびっくりというか、そうなんだ、みたいなところがありましたね。
谷津:
現場では他の人との密なやり取りがあるからこそ、面接でも意思疎通がスムーズにできるかどうかがチェックされると思うので、コミュニケーション力がすごく大事ですよね。
山本:
めちゃくちゃ大事ですね!! いかにミスが無いようにうまく伝えるのかって本当にコミュニケーション能力、伝達能力って大事だなって感じています。
谷津:
入社したての頃って具体的にどういう業務をやっていたかお伺いしてもいいですか。
山本:
まずプロジェクトに配属されて、Niagaraでエフェクトを作っていきました。
あとコンセプトアートを描かせていただいたりもしましたし、テクスチャの制作もしたりしました。
谷津:
いろんな業務経験を積んで、やれることが増えることが結構あるんですね。
山本:
そうですね。卒業したてはUnityしか触れなかったし、テクスチャは手描きだけだったんですけど、
業務では様々なツールに触れるのでアカデミーでは触ってこなかったツールも使えるようになりました。
最初はすごく怖いというか、うまくできるかなって苦手意識があったんですけど、
触っていくうちにだんだんできるようになってくると表現の幅が広がって、すごく面白いなと思いました。
谷津:
すごい。アカデミーとか関係なくデザイナーとして積み上げていて感動しています。とてもいい会社さんですね。
山本:
人数もそんなにいないので、自分でやるという気持ちがないと大変だと思います。
誰かがマテリアルを作ってくれる、テクスチャを作ってくれる、というスタンスだとすごく苦労すると思います。
谷津:
積極的に自分で制作に取り組めるというか、動ける人ってやっぱり大事だと思います。
山本:
はい。能動的に動けるのは大事かなと思います。
谷津:
就業されてもうすぐ2年だと思いますが、業務の幅も制作する範囲を広げながら大きく成長されているんですね。
谷津:
そういえば、何故エフェクトデザイナーをめざすことになったんですか?
山本:
デザイナーといえば、キャラとか背景とか色々ある中で何故エフェクトにしたかというと、結構自由度が高いのかなというのがあって。
例えば『炎』は現実にありますが、『炎の魔法』は現実にはないですよね。そういったものをデザインするのって面白いのかなって。
谷津:
確かにそうですね。キャラモデルも最近は実写のような感じで目を見張るものも多くありますが、
エフェクトもHoudiniなどの環境表現もすごくリアルになってきていますよね。
ファンタジーの部分も同じように視覚的に表現できるっていうのはエフェクトならではの魅力だなと思っています。
最後になりますが、ゲーム業界にチャレンジするか迷っている方やエフェクトの道に進もうか悩んでいる方も沢山いると思うんですけど、そういった方へ向けてメッセージを頂けますか。
山本:
私は転職を決心したのが30代になってからだったので不安はあったんですけど、一度限りの人生で、仕事をする時間って人生の中で大半を占めるので、その中で好きなことを仕事にするのってやっぱり楽しいですし、不安はあったとしても飛び込んでみる!というのもいいのではないでしょうか。
年齢も業界も関係なく、エフェクトのことをひたすら考えていれば道が開けるというか、努力すれば未経験からゲーム業界への就職も無理じゃないです。
山本さんのように、30代からでも情熱と熱意をもって突き進んでいけば、業界未経験からでも夢をつかむことができます!
人生一度きり、本気で業界就業をめざすのであれば挑戦するのは今からでも遅くはありません。
アカデミー卒業後も同期生や後輩と交流を続けていらっしゃるとのことで、山本さんが人との関わりを大切にされている様子もうかがえました。
アカデミーでは授業料完全無料で、就業後に活かせる実践形式の授業を行っております。
気になる方や少しでも興味がある方は、 こちらから随時説明会を開催しておりますので、ぜひ参加してみてください。
文・画像キャプション:アカデミー運営